放射線治療センター(放射線治療科)

放射線治療に関する最新医学情報のトピックスをなるべく平易に解説しています

放射線治療コラム

放射線治療について ~切らないがん治療~

放射線治療とは、手術などの外科的治療、抗がん剤を使用した化学療法と並ぶ、歴史のあるがん治療のひとつです。放射線がDNAに作用して正常細胞を残しながらがん細胞を選択的に死滅させる治療法で、身体にメスを入れることなく治療ができるので身体の外観や機能を温存でき、また、適応幅が非常に広いのが特徴です。

特に最近では、画像で見える腫瘍に対して、正確に高線量を投与して腫瘍を消滅させる高精度放射線治療の技術が大きく進歩し、治療効果が上がり副作用は減じています。

一方、画像で見えないような微細な転移に対しては少ない線量で十分な効果があるので、比較的広い範囲を照射して再発を予防することや、骨転移などの疼痛緩和のために少ない線量を投与することもあります。いずれにせよ、適切に照射すれば高い効果を維持したまま副作用を最低限にできることが特徴です。

当科では、がん治療、放射線治療に関してセカンドオピニオンも行っています。オンラインでのセカンドオピニオンも可能ですのでご相談ください。

VMAT(IMRT)を施行しています

当院ではVMAT(回転強度変調放射線治療)を実施しています。VMATはIMRTを更に進化させたもので、正常組織の障害を極小にして標的(腫瘍)に高線量を投与できます。それによって副作用が少なく、かつ治療効果を高めることができます。特に通常の2〜4倍微細な2.5mmコリメータと画像誘導システムを使って、定位放射線治療など細かい治療にも高精度な治療を提供できます。

VMAT(IMRT)とは?

前立腺がんの体幹部定位放射線治療(SBRT)について

前立腺がんの放射線治療は様々な治療法があり、従来は37〜40回程度の外照射が行われていますが、最近は少ない回数で治療しても効果が変わらないことが分かってきており「前立腺がんの放射線治療は5回だけ外来通院でよい?」、当院では5回の体幹部定位放射線治療(SBRT)を積極的に行っています。通院回数が大幅に減少し、短期で治療を終了することができます。 体幹部定位放射線治療は通常分割の照射と比較して、成績は同様ですが、頻尿などの急性副作用が若干強めに生じることもあります。

True Beam STx+ExacTracシステム

当院では、米国のバリアン社製の放射線治療装置「True Beam STx」を基に、さらにドイツのブレインラボ社製画像誘導システムExacTracを統合した高精度治療に特化した装置を導入しています。

多くのライナックやサイバーナイフ最新型では照射範囲を決めるコリメータという装置が最小で5~10ミリ幅のものを使っていますが、当院の「True Beam STx」では2.5ミリと特別に細かいので腫瘍の形に合わせた精密な照射が可能です。

また当院ではExacTrac画像誘導や装置組込みのCTによる位置確認を原則毎回の照射時に行なっており、更に確実な治療の提供に努めています。

TrueBeamSTx

バリアンメディカルシステムズ社製リニアック TrueBeam STx

専門的知識を持ったスタッフによる放射線治療

放射線治療装置が最新であったとしても、専門の知識・技術を持ったスタッフが充実していないと、放射線治療を安全に実施できません。

当院には、高精度放射線治療に経験の深い放射線治療専門医1名と放射線治療担当スタッフ数名、大学から派遣された非常勤の医学物理士1名が在籍しています。放射線技師のうち1名は放射線治療を専門とした認定を取得しているので、誰もが安心安全な放射線治療を受けることができます。

また、当院には女性スタッフも在籍しておりますので、乳がんをはじめとする外科領域や子宮がん等の婦人科領域の放射線治療も安心して受けていただけます。

放射線治療に適した環境

当院の放射線治療センターは清潔で環境も良く、実際に放射線治療を行う放射線治療室も広々としており、誰もが安心して放射線治療を受けることができます。

また、放射線治療は平日の決まった時間に毎回行うものですが、当院では患者さんの都合により時間が変更になる場合でも、可能な限りご希望の時間に放射線治療ができるよう対応します。

短期間での治療が可能

最近では正確な治療により、効果を落とすことなく短期間で照射する方法があり治療期間を短くすることが可能です。例えば乳がんの照射は通常25回(約5週間)のところ、15回(約3週間)で可能です。前立腺がんも通常25~40回程度(約8週間)ですが、高精度の治療技術で5回程度で行う場合もあります。当院では可能な場合は積極的に短期照射を取り入れています。

放射線治療による副作用

放射線治療による副作用は多くありません。しかし、場合によっては長期にわたる副作用もあり得ますので、それを防ぐ放射線治療医やスタッフの経験や技量がたいへん重要です。治療後半などで粘膜痛など一時的な副作用が出現することもありますが、なるべく少なくするように工夫しています。

副作用はがんの種類や照射部位により異なるため、個々の副作用については治療開始時にご説明します。例えば頭部では照射部位の脱毛が生じることがあります。前立腺の治療では一時的に頻尿が起こることがありますが、可能な限り副作用を少なくする処置を行います。

放射線治療効果の例

腫瘍による無気肺の解除

無気肺の放射線治療術前

before

無気肺の放射線治療術後

after

腫瘍による無気肺ではよほど大きな腫瘍でない限り、多くの場合放射線の効果は大変高いです。すぐに効果が発現することも、治療後数週間を要する場合もあります。

ピンポイントで照射する定位放射線治療

定位放射線治療術前

before

定位放射線治療術後

after

ピンポイントで照射する定位放射線治療は、正常脳に障害を与えない方法で、ガンマナイフ治療と同じです。この程度の大きさの腫瘍の場合は1回で照射し、ほぼ100%近い患者さんで制御可能です。比較的大きな腫瘍には、3~5回程度に分割して照射するほうが副作用も少なく、効果が期待できます。全身状態を考慮し、多数多発する場合は全脳照射という方法も行います。

放射線治療の流れ

①診察

  • 病状、検査所見から、放射線治療医が治療方針やスケジュールを決定します。治療を進めていくうえでの注意事項など、放射線治療についてご説明します。

②計画用CT撮影

  • 治療計画用CTを撮影し、がんの位置・大きさ・形状を正確に把握します。必要に応じて固定具を作成、造影剤を使用します。PET検査などを行うこともあります。

③治療計画作成

  • 撮影した画像をもとに、最適な照射法を検討し、治療計画を作成します。

④治療開始

  • 1回の治療時間は入室から退室まで約15分程度です。正確な位置に照射することが非常に重要であり、原則として毎回の照射の前に位置確認の画像を撮影します。基本的には通院で行い、治療期間はがんの種類と部位によって異なります。

⑤フォローアップ

  • 治療期間中は少なくとも週に1度、治療後も定期的に診察し、治療効果や副作用を確認していきます。

放射線治療Q&A

放射線を当てることで痛みや副作用はありますか?
照射中に痛みや熱さを感じることはまったくありません。しかし照射部位によっては、照射回数を重ねるごとに皮膚炎や粘膜炎等で違和感や痛みを伴うことがあります。症状が強い場合はお薬などを処方して痛みを和らげます。副作用はがんの種類や場所によって異なりますので、詳しくは放射線治療医よりご説明いたします。
仕事をしながら、放射線治療を受けられますか?
通常は、通院しながら放射線治療を受けていただくことができます。抗がん剤併用などの場合には入院いただくこともあります。また、治療時間の調整にも可能な限り対応いたします。
治療期間中の日常生活で注意することはありますか?
激しい運動やお酒、たばこはなるべく控えるなどの注意は必要ですが、一般的には日常生活には特に制限はありませんし、お風呂に入っても大丈夫です。
治療は途中で休んだら効果がなくなりますか?
休んでもすべて効果がなくなることはありませんが、放射線治療は平日続けて照射するように計画が立ててありますので、予定通り照射を続けることが望ましいです。
治療効果はいつごろから出てきますか?
すぐに効果がみられる場合もありますが、放射線治療は治療終了後数ヶ月、時に半年以上かけて、ゆっくりと効果が現れる場合もあります。
放射線治療の費用について教えてください。
患者さんの症状や治療方法により異なりますので、詳しくはスタッフにお尋ねください。また、治療経過により治療計画CTを追加することもあります。その場合、治療の費用の他に別途検査料が必要になる場合もございます。高額療養費については会計時にスタッフにお尋ねください。
治療開始時期は調整できますか?
働いている方や直近で予定がある等ですぐに治療を始めるのが難しい場合は、ある程度であれば開始を遅らせることもできます。ただし、すぐに治療を開始した方がいいと医師が判断した場合は、時期を遅らせずに開始させていただきます。
放射線治療は手術などができない場合におこなう治療でしょうか?
そうではない場合とその通りの場合があります。治療の対象となる主な疾患にあるように、手術などよりも最初から放射線で治療した方が良い疾患が多数あります。また乳がんの術後照射、直腸がんの術前照射のように手術と組み合わせることで効果を増強し、治療成績を向上し障害(人工肛門化など)を減じることができます。
また「身体に優しい治療」であるので、高齢者や他の病気があって手術が難しい方も放射線治療ならでき効果も遜色ない場合も多いです。主治医やセカンドオピニオンなどとの相談で自分にあった治療を行うことが大切です。
セカンドオピニオンを希望しますが、主治医の気分を害するのではないかと心配です。
そのようなことはないです。セカンドオピニオンは医師の間でも推奨されており、また患者さんの権利でもあります。万一、それで気分を害するような医師ならば、治療後長く付き合う際にもおそらく問題となりむしろ治療前に転医した方が良いでしょう。また、一部の緊急の症状がある場合を除いて、がんの治療で時を争うことはなくセカンドオピニオンの時間が十分取れますので落ち着いて考えてください。
総合東京病院で放射線治療の予約をしたい時は?
患者さんが直接予約をされる場合は、予約・相談ダイヤル(0570-00-3387)よりご予約ください。他院より患者さんを紹介していただく場合は、地域連携室(03-3387-5444)までお問い合わせください。受診当日は、紹介状・画像データ・保険証を持参してご来院ください。
VMAT(IMRT)とはどのような治療ですか?
最新の装置では、多方向からコンピュータ制御で微妙に放射線の強度を調節しながら照射して、正常組織を守りながら正確に腫瘍を照射できる機構(IMRT)ができるようになっています。しかし装置としては可能でも、保険診療としてIMRTを実施するためには、間違えなく確実な実施が可能になるように定められた施設基準を満たす必要があります。当院ではその基準を満たしています。
定位放射線治療とIMRTとはどのように違うのですか?
実は技術的にはかなり似通った治療です。違いをいえば、IMRTは大きい腫瘍でも小さい腫瘍でも、腫瘍の形に合わせて正確に照射する技術で、多くの腫瘍に適応可能です。
定位放射線治療(SBRT)は、比較的小さな腫瘍に数回のみで高い線量を投与することで、大きな腫瘍には使えません。原発性、転移性の肺がんや肝臓がん、腎臓がん、前立腺がんや、少数個の転移などに威力を発揮します。
当院では、定位放射線治療にもIMRTの技術も応用して融合する方法をおこなっています。

スタッフ紹介

国枝悦夫医師

国枝 悦夫

放射線治療センター長

東海大学客員教授

慶應義塾大学客員教授

東京都立大学客員教授

ベストドクター2022-2023選出

主な経歴

  • 1981年 慶應義塾大学 卒業
  • 2010年 東海大学放射線治療科学領域主任教授

専門としている領域

  • 放射線治療(特に、脳腫瘍、乳がん、前立腺がん、画像誘導高精度放射線治療)

専門医・指導医

  • 日本医学放射線学会・日本放射線腫瘍学会共同認定放射線治療専門医・指導医
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
  • 米国放射線腫瘍学会(ASTRO)会員
  • 日本専門医機構認定放射線科専門医
根本貴文医師

根本 貴文

医長

主な経歴

  • 2014年 東北大学医学部 卒業
  • 2022年 慶應義塾大学大学院医学研究科 修了(医学博士)
  • 2022〜2023年 米国スタンフォード大学医学部 客員講師

専門としている領域

  • 放射線治療

専門医・指導医

  • 日本医学放射線学会認定 放射線科専門医
  • 日本医学放射線学会・日本放射線腫瘍学会共同認定 放射線治療専門医

患者さん用資料

研究その他

当科では循環器内科、東海大学などと協力して、「非造影CTでの冠動脈位置を検出する深層学習プロトタイプシステム」の開発研究をおこなっています。放射線治療で影響を受ける可能性がある冠動脈の位置を自動検出する方法の研究です。患者さんのCTなどの画像データを完全に匿名化してプライバシーに十分に配慮した上で使わせていただく場合があります。

当施設の発表

  • 小松原暁、宮田祐輔、宗像真由花、北原翔、株木重人、根本貴文、國枝悦夫
    「乳腺電子線ブースト照射における深吸気息 止め照射法(DIBH)の影響」
    第37回高精度放射線外部照射部会学術大会、2024年3月
  • シンポジウム Cardiac Stereotactic Radiotherapy for Recurrent Ventricular Tachycardia
    座長  日本放射線腫瘍学会第36回学術大会 2023年12月
  • 根本 貴文
    市民公開講座「体にやさしい最新の放射線治療」
    第83回 日本医学放射線学会総会 レントゲン博士没後100周年記念「知っておきたい画像医学」、2023年10月
  • シンポジウム8「難治性心室頻拍に対する定位放射治療―非腫瘍性疾患への新たな展開」国枝悦夫 他
    日本放射線腫瘍学会第35回学術大会、2022年11月
  • シンポジウム3 循環器放射線治療「高齢社会における心臓放射線治療の意義と普及にむけた課題」国枝悦夫 他
    第59回日本臨床生理学会総会、2022年10月
  • シンポジウム7「致死性心室不整脈に対する体外放射線治療」:SRAT(定位放射線抗不整脈療法):放射線治療の新しい概念 国枝悦夫 他、座長及び発表
    第81回日本医学 放射線学会、2022年4月
  • 心電学関連シンポジウム「体外放射線による不整脈治療計画の実際」座長及びオープニング
    心電学関連春季大会2022、2022年4月
  • 宗像真由花、宮田祐輔、株木重人、早田憲治、國枝悦夫.
    「患者個別用具の間違えを防ぐ携帯型Q Rコード自動認識システムの試作と初期評価」
    第34回高精度放射線外部照射部会学術大会、2021年3月

放射線治療センターの論文(2020年以降)

  1. Mutu E, Akiba T, Matsumoto Y, Kunieda E, Nagao R, Fukuzawa T, Katsumata T, Kuroki T, Mikami T, Nakano Y, Kabuki S, Futakami N, Nemoto T, et al. Effect on Heart and Lung Doses Reduction of Abdominal and Thoracic Deep Inspiratory Breath-hold Assuming Involved-field Radiation Therapy in Patients with Simulated Esophageal Cancer. Tokai J Exp Clin Med. 2023;48:32-7.
  2. Nemoto T, Takeda A, Matsuo Y, Kishi N, Eriguchi T, Kunieda E, et al. Applying Artificial Neural Networks to Develop a Decision Support Tool for Tis-4N0M0 Non-Small-Cell Lung Cancer Treated With Stereotactic Body Radiotherapy. JCO Clin Cancer Inform. 2022;6:e2100176.
  3. Eriguchi T, Takeda A, Nemoto T, Tsurugai Y, Sanuki N, Tateishi Y, et al. Relationship between Dose Prescription Methods and Local Control Rate in Stereotactic Body Radiotherapy for Early Stage Non-Small-Cell Lung Cancer: Systematic Review and Meta-Analysis. Cancers (Basel). 2022;14.
  4. Nemoto T, Futakami N, Kunieda E, Yagi M, Takeda A, Akiba T, et al. Effects of sample size and data augmentation on U-Net-based automatic segmentation of various organs. Radiol Phys Technol. 2021;14:318-27.
  5. Iwaki K, Kamaya A, Fuwa N, Tanisada K, Matsueda K, Shibahara T, Fujita Y, Kunieda E, et al. Verification of the junctional dose for irradiation of the chest wall and supraclavicular regions under the circumstances of advanced technologies. Med Dosim. 2021;46:e1-e9.
  6. Eriguchi T, Tsukamoto N, Kuroiwa N, Nemoto T, Ogata T, Okubo Y, et al. Repeated Stereotactic Body Radiation Therapy for Hepatocellular Carcinoma. Pract Radiat Oncol. 2021;11:44-52.
  7. Amino M, Kabuki S, Kunieda E, Yagishita A, Ikari Y, Yoshioka K. Analysis of depolarization abnormality and autonomic nerve function after stereotactic body radiation therapy for ventricular tachycardia in a patient with old myocardial infarction. HeartRhythm Case Rep. 2021;7:306-11.
  8. Sawada M, Kunieda E, Akiba T, Kabuki S, Nagao R, Fukuzawa T, et al. Dosimetric study of whole-brain irradiation with high-energy photon beams for dose reduction to the scalp. Br J Radiol. 2020;93:20200159.
  9. Nemoto T, Futakami N, Yagi M, Kunieda E, Akiba T, Takeda A, et al. Simple low-cost approaches to semantic segmentation in radiation therapy planning for prostate cancer using deep learning with non-contrast planning CT images. Phys Med. 2020;78:93-100.
  10. Nemoto T, Futakami N, Yagi M, Kumabe A, Takeda A, Kunieda E, et al. Efficacy evaluation of 2D, 3D U-Net semantic segmentation and atlas-based segmentation of normal lungs excluding the trachea and main bronchi. J Radiat Res. 2020;61:257-64.
  11. Iijima K, Okamoto H, Takahashi K, Aikawa A, Wakita A, Nakamura S, Nishioka S, Harada K, Notake R, Sugawara A, Yoshimura R, Kunieda E, Itami J. Inter-fractional variations in the dosimetric parameters of accelerated partial breast irradiation using a strut-adjusted volume implant. J Radiat Res. 2020;61:123-33.

診療時間

 
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中野
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午後 セカンドオピニオン外来
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