イヤホンの使いすぎで難聴に?【イヤホン・ヘッドホン難聴】

イヤホンで音楽や映画を視聴することが多くあります。
イヤホンの使い過ぎは耳に悪いのでしょうか?
患者さんのためのQ&A

ケイタイを使ってどこでも気軽に映画鑑賞を楽しめたり、外出先や喫茶店でウェブ会議を行ったりするようになり、ケイタイやPCはもちろん、周りを気にしないで済むイヤホンは私たちの社会生活に欠かせないものになってきました。
便利になる一方でその弊害も耳にするようになりました。長時間にわたってイヤホンやヘッドホンで音楽などを聴き続けると聴力が失われるイヤホン・ヘッドホン難聴という病気をご存知ですか?大きな音によって耳の細胞が傷つけられ、聴力が失われていきます。音が聞こえないことになかなか気づきにくいことから、知らぬ間に聴力が低下していることが多いようです。
この病気と難聴から逃れるための方法についてまとめました。

WHOが勧告!スマホ世代は要注意

仕事の休憩時間や通勤・通学中にスマホで音楽や動画、ゲームを楽しむ人が増えてきました。場所を選ばず娯楽を楽しめるようになった反面、健康被害を訴えているスマホ世代が増えているようです。世界保健機関(WHO)はスマホ世代がイヤホン・ヘッドホン難聴になる危険にさらされていると発表しました。

知らぬ間に難聴に!イヤホン・ヘッドホン難聴とは?

世界保健機関(WHO)は、全世界でおよそ5億人が日常生活に支障を来すほどの聴覚障害を抱えており、2050年までには9億人以上が日常生活に支障を来すほどの聴覚障害を抱えることになると推測しています。

イヤホンやヘッドホンで音楽などを長時間にわたって大音量で聴き続けると耳が聞こえなくなることがあります。これをイヤホン・ヘッドホン難聴と呼びます。

音響外傷(音への過大な暴露)によって世界の11億人の若者が難聴になる恐れがあり、12〜35歳の約4,300万人が難聴やそれに近い状態にあり、85デシベル※1で8時間、100デシベル※2で15分を超えると危険として、音量を下げたり、連続して聴かないよう休憩をとったり、音楽を聴くのを1日1時間までに制限するよう勧告しています。

※1、2

20デシベル 木の葉の触れ合う音
50デシベル エアコンの室外機の音
85デシベル 走行中の電車内や救急車のサイレンを近くで聞いた時くらいの大きさ
100デシベル 電車が通る時のガード下や地下鉄構内にいる時くらいの大きさ

イヤホン・ヘッドホン難聴の症状として、話し声が聞き取りづらい感じがしたり、耳鳴りのような音がしたりします。少しずつ聴力が低下していくため、気付いた時には難聴が進行してしまっていることが多いといわれています。

イヤホン・ヘッドホン難聴の主な症状

  • 数時間にわたって続く耳鳴り
  • 耳の中がつまった感じがする(閉塞感)
  • 高音が聞こえづらい

難聴になってしまうワケ

音は耳の中に空気の振動として伝わり、蝸牛(かぎゅう)というかたつむりのような形をした器官に入ります。その内部にある有毛細胞が音を電気信号に変えて脳に伝え、私たちは音として認識しています。
音の大きさや聞いている時間によっては、有毛細胞は損傷を受けてしまい、聴力が低下する場合があります。一度傷つけてしまうと再生することがないので聴力が戻らないこともあります。注意したいのは適切な音量でも長時間にわたってイヤホンやヘッドホンを使うと難聴を引き起こすことにつながることです。

イヤホンやヘッドホンを使うときは

◯周りの音が聞こえるくらいの音量に設定する
◯1日に1時間以内にする
◯耳が疲れてきたらイヤホンなどを外して休む

気になる方は聴力検査してみましょう

イヤホンやヘッドホンで音楽を聴いていることが多い方は自分の聴力が低下していないか検査してみましょう。一般的に耳鼻咽喉科で検査を受けることができます。
標準純音聴力検査は、125ヘルツから8000ヘルツの間の周波数を使って聴くことができる1番小さな音でヘッドホンを使って聞こえるかどうかを答えてもらいながら調べます。また耳の後ろにある頭骨から音を響かせる検査も行います。

まとめ

イヤホン・ヘッドホン難聴は長時間にわたって音楽などを聴くことによって耳の中の細胞が傷つけられて聴力が失われていきます。音量は外の音が聞こえる程度にして定期的に耳を休めることが大事です。また耳の聞こえがおかしいなと感じたら一度受診してみましょう。

監修

総合東京病院 耳鼻咽喉科

大塚 邦憲

耳鼻咽喉科

公開日:2023年8月16日 |最終更新日: |カテゴリ:医療コラム
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