限局性前立腺がん治療法の長期比較

転移のない前立腺がん

転移のない前立腺がんはホルモン治療なども併用しながら前立腺のみの治療を行います。腫瘍マーカー(P S A)の値や病理標本の悪性度などを基に高、中、低リスクなどに分類しますが、低いリスクの場合、手術や放射線以外に「監視療法」という選択もあります。これは積極的な治療をしないでPSAの値や場合によっては生検を繰り返して様子をみる方法です。

英国の臨床研究結果

最近、英国から手術、放射線治療、監視療法の3つの方法に患者さんを無作為に割り振って15年間の成績を比較した臨床研究の結果が発表されました。リスク分類では低リスクが3分の2で他は中リスクが多く高リスクは2%ほどです。

その結果、どれを選択しても前立腺がんによる死亡は3%程度で非常に少なく、治療の間で差はありませんでした。ただ、監視療法では進行などで75%位の方は他の治療に移行し、また若干遠隔転移の出現が多くみられました(監視療法は10%、手術と放射線とも5%程度)。逆にいうと遠隔転移が多少出現しても15年位では生存に関係ないとの結果でした。 したがって、(少なくとも低リスクから中リスクの一部では)「治療法」は副作用中心に考えてよいかと思われます。


文献

  • Fifteen-Year Outcomes after Monitoring, Surgery, or Radiotherapy for Prostate Cancer. Hamdy FC, et al. N Engl J Med. 2023.

監修

総合東京病院 放射線治療センター

国枝 悦夫

放射線治療センター  放射線治療セカンドオピニオン外来

国枝悦夫医師
公開日:2023年4月17日 |最終更新日: |カテゴリ:前立腺, 放射線治療コラム