6. 胸椎変性疾患

1)胸椎黄色靱帯骨化症 ossification of yellow ligament(OYL)あるいはossification of ligamentum flavum(OLF)

胸椎黄色靱帯骨化症(図6-1)は、頸椎あるいは腰椎疾患と比較して日常診療中に遭遇する機会は少なく、非特徴的な背部痛や病巣レベル以下の知覚障害、対麻痺などの脊髄症状を示すことから、その臨床診断は必ずしも容易ではない。同様なことは胸椎後縦靱帯骨化症についても言える。

胸椎OYLは下位胸椎に認められることが多い。発生年齢は40歳以降の中~高年層に多い。一方、OPLLは女性に好発する傾向がある。

治療は脊髄症状がある場合は原則的には外科的治療が選択される。黄色靱帯骨化症は黄色靱帯が骨化したものであるが、後縦靱帯骨化症と同様に硬膜と一塊化することがあり、骨化巣を摘出すると硬膜欠損をきたし、髄液漏を起こす。したがって、このような場合には硬膜骨化巣を意図的に残存浮遊させ、髄液漏を防ぐ対応がなされる(図6-2、6-3)

胸椎黄色靱帯骨化症

図6-1 第10胸椎レベルに黄色靱帯骨化(OYL)があり、脊髄を圧迫偏移している。

黄色靱帯骨化の摘出

図6-2 黄色靱帯骨化の大部分を摘出し、中央部に硬膜骨化巣(矢印)を残存・浮遊させた術中所見。

胸椎黄色靱帯骨化症の術後胸椎CT

図6-3 術後胸椎CT。硬膜表面に遺残骨化部(矢印)が認められる。硬膜の減圧効果は良好である。