なぜ下肢静脈瘤ができるのか? ~血管の役割から発症メカニズムを知る~

下肢静脈瘤はなぜできる?
患者さんのためのQ&A

なぜ脚は浮腫むのか?

人間の血管は大きく「動脈」と「静脈」の2つに分けることができます。

動脈は肺で酸素化され心臓から拍出された血液の通り道です。一方、静脈は組織で酸素と栄養を放出した血液が心臓に戻ってくるための通り道になります。下肢静脈瘤を理解するためには、静脈の特徴を理解する必要があります。

動脈も静脈も心臓につながっており、心臓から動脈へと拍出された血液が静脈を通って心臓に戻ってくるのは至極当然のように思われるかもしれませんが、実際にはそう簡単ではありません。通常、動脈圧よりも静脈圧の方が低いので、寝ている状態であれば、単純に圧力の差によって動脈から静脈、そして心臓に血液が流れますが、立った状態では事情が異なってきます。

立った状態では脚の静脈内に存在する血液には重力がかかるので、寝ている状態よりも遥かに心臓に血液が戻るのは大変になります。つまり、立位では重力の影響で心臓に戻り切らなくなった血液が下肢の静脈内に溜まった状態(うっ滞)になります。血液がうっ滞すると、血液の中の水分が血管から漏れ出し、組織に溜まり、これが浮腫となります。そうして長時間立った状態が続くと脚が浮腫むことになります。


「脚は第2の心臓」と言われるワケ

しかし脚に溜まった血液を意図的に心臓に戻してあげることも可能です。よく「脚は第2の心臓」という言葉を耳にするかと思いますが、脚の筋肉を動かすことで、筋肉の中を走行している静脈を圧迫することができます。脚の筋肉がいわば「ポンプ」のように機能するのです。長時間立位を保たなければならない場合には、適宜脚を動かすことによって、血液が心臓に戻るのを助けることができます。


逆流防止弁の働きについて

ここで疑問に思う方もいるかもしれませんが、例え脚の筋肉を動かして、下肢の静脈内に溜まっていた血液を上へと押し出すことができたとしても、重力の影響を受けてまた血液は下肢の静脈に溜まってしまうのではないか?と。全くその通りで、脚の静脈がただの管であれば血液が行ったり来たりするだけになってしまいます。実際には脚の血管にはうまい仕組みがありまして、内部に逆流防止弁が存在しています。この逆流防止弁が存在するおかげで、脚の筋肉を動かして一度心臓の方へと押し出された血液は、逆流することなく常に心臓の方へと流れていくことができるのです。「筋肉によるポンプ作用」と「逆流防止弁」が下肢の静脈に存在することが、立位での脚の静脈内の血液を効率的に心臓に戻すために必要なメカニズムということになります。


下肢静脈瘤の原因を理解するには、この逆流防止弁の存在を理解しておく必要があります。下肢の静脈は、さらに表在静脈と深部静脈の2つに分類されます。皮膚に近い、つまり体表に近い部分に存在している表在静脈と、表面からは見えないくらい深い部分を走行している深部静脈です。通常表在静脈よりも深部静脈の方が太く、血液量も多いです。表在静脈は要所要所で深部静脈に合流し、表在静脈が合流する度に深部静脈は太く、血液量も増えて、最終的には心臓に合流します。これは自然界で言う川と海の関係と同じです。小さな小川が合流するたびに太い川となり、最後は大河となり海に注ぎます。静脈と川が違うところは、表在静脈と深部静脈の合流部には逆流防止弁が存在している点です。つまり正常であれば深部静脈から表在静脈へと血液が逆流することはないのです(図1)。

下肢静脈の逆流防止弁

図1 下肢静脈の逆流防止弁


下肢静脈瘤の発症メカニズム

しかし逆流防止弁も壊れることがあります。この表在静脈と深部静脈の合流部で逆流防止弁が壊れると、深部静脈から表在静脈への血液の逆流が起こります。すると表在静脈の逆流防止弁にかかる負担が大きくなり、どんどん壊れていきます(図2)。こうして逆流防止弁の壊れた表在静脈はボコボコと瘤化し、下肢静脈瘤となります(図3)。これが下肢静脈瘤の発症メカニズムです。


下肢静脈瘤の発生

図2 下肢静脈瘤の発生(コヴィディエンより画像提供)

下肢静脈瘤の例

図3 下肢静脈瘤の例(コヴィディエンより画像提供、一部改変)



公開日:2021年12月29日 |最終更新日: |カテゴリ:下肢静脈瘤コラム, 医療コラム
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