薬の使用期限とは?

処方してもらった薬はいつまで使えるの?
患者さんのためのQ&A

食品の賞味期限と消費期限

皆さんは食べ物の賞味期限を気にする方でしょうか?

私はどちらかというと自分の感覚を頼りに期限切れのものでも、大丈夫そうなら食べてしまいます。基本的に食いしん坊なんです。

世間ではコンビニエンスストアなどで売られている食品が、まだ食べられるのに期限切れとして廃棄される“フードロス”が大きな問題となっています。

そもそも食品の期限には賞味期限(“おいしく食べられなくなる”期限)消費期限(安全に食べることができなくなる期限)があります。

賞味期限は状態が比較的ゆっくりと変化する食品に設定され、期限を迎えても多くは食べられる状態です。一方で、消費期限は急激に傷んでしまう可能性がある食品に設定されます。そして、これらの“期限”は安全性を担保するために、少しだけ早目に設定されます。そのため、もったいないけど廃棄されてしまう食品が生じます。

“もったいない”安全性はどちらも大切なので、フードロスを減らすには個別に適した対応をとるべきなのかなと個人的には思います。

医薬品の使用期限

では医薬品の期限はどうでしょうか。

医薬品の外箱には使用期限が記載されていて、一般的に製造から3~5年で設定されています。

製薬会社はこの使用期限を設定するために、食品よりもかなり厳重な安定性試験を行っています。

例えば一般的な錠剤であれば、性状(見た目、におい、味など)、各種成分の含量、水などに溶ける時間、硬度などを経時的に測定します。測定する際の保存条件は温度、湿度、光の条件を変え、加速試験(40℃、湿度75%、暗所)、長期保存試験(25℃、湿度60%、暗所)、過酷試験と呼ばれる厳しい条件下で試験を行います。さらにシートに包装された状態と無包装状態の両方で安定性が評価されます。

このように医薬品は食品に比べ厳重に使用期限を設定しています。これは、医薬品の品質が劣化して効果がなくなったり、副作用が強くなったりすることがあってはならないからです。

処方薬の使用期限

それでは、医師が処方した薬は、調剤してからいつごろまで有効なのかご存知でしょうか。

通常は製造から3~5年と述べましたが、薬局で調剤した時点で製造からどのくらい経過していたかは分かりません。

処方された薬は、原則として服用開始日からの処方日数が“期限”とされるため、場合によっては期限切迫品が調剤されることもあります。

このような期限切迫品を調剤しなければならない時は、通常患者さんにその旨をお伝えすると思います。

処方してもらった薬はいつまで使えるの?

「以前子供が熱を出した時にもらった熱冷ましは、いつまで使えますか?」という質問を患者さんのご家族からいただくことが多くあります。

毎日服用する薬と違って、症状が出た時に使う薬(頓服薬)は処方日数が無いことが多いので、いつまで使えるのか分かりづらいかもしれません。

同じ病気の症状ならば使っても構わないのですが、違う病気による症状であることも考えられるので、気になる時は医師・薬剤師に相談することをお勧めします。

子供の場合、成長して身体が大きくなるため、以前の服用量では効き目が弱まってしまう可能性があるので注意が必要です。他にも、包装から出してしまった薬は品質の劣化が早まる可能性がありますので、保管方法については薬剤師の説明を良く聞いていただきたいと思います。さらに、調剤された薬が副作用等のために 使わなくなった場合、その薬自体は品質上問題が無いとしても、法律的にそれを他の患者さんに使用することはできません。そのため、必要以上に長い期間の処方というのは避けなければならないと思います。

以上のことから、皆さんには、① 薬を適切に保管する、② 処方された薬は原則として処方期間で飲み切る、という2点をお願いしたいと思います。薬は食品に比べてとても高価ですから、以上のことを理解した上で“ドラッグロス”を減らせるよう気を付けたいものです。

監修

総合東京病院
薬剤科
外石 昇

男性薬剤師
 
公開日:2022年3月1日 |最終更新日: |カテゴリ:医療コラム
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