【自由診療】顎変形症治療

顎変形症の治療が保険診療ではなく、「自由診療」となるケースについて

顎変形症の治療は、通常、健康保険の適用を受けて行われます。保険診療における治療の流れは以下のとおりです。

  1. 術前矯正治療(1年半~2年)
  2. 外科手術(顎の骨の位置を整える手術)
  3. 術後矯正治療(1~2年)

術前および術後の矯正治療は、当センターと緊密に連携している矯正歯科専門の開業医が担当し、当院での外科手術と連動して総合的な治療を進めてまいります。
しかし、患者さんの中には「噛み合わせの改善」よりも、「顔の非対称や下あごの突出といった見た目の改善を早く行いたい」と希望される方も少なくありません。そうした場合には、サージャリーファーストという治療法を選択することがあります。
この方法では、通常とは逆に、先に外科手術で骨格の位置を整え、その後に矯正治療を行います。審美面での即時的な改善が期待できる一方で、保険診療の枠組みには含まれていないため、自由診療(全額自己負担)として対応することになります。
また、保険診療では、金属製の矯正装置を歯の表面に取り付けるのが一般的ですが、「装置を他人に見られたくない」という審美的な理由で、以下のような目立ちにくい矯正方法を希望される患者さんもいらっしゃいます:

  • マウスピース型矯正装置(インビザライン等)
  • 舌側矯正(歯の裏側に装置を取り付ける方法)

これらの装置による矯正治療も、保険の対象外であり、自由診療となります。これらの治療も、当センターと連携する矯正歯科専門医が担当いたします。

自由診療を導入することのメリットについて

顎変形症治療に自由診療を取り入れることによって、以下のようなメリットが期待できます。

  1. 多様な患者ニーズに対応可能
    「早く顔貌の改善を図りたい」「目立たない装置で治療を受けたい」といった希望に柔軟に対応できます。
  2. 新しい治療技術を導入できる
    サージャリーファーストやマウスピース矯正、舌側矯正など、保険では適用できない治療法も提供可能です。
  3. 治療計画の自由度が高まる
    患者さん一人ひとりの希望やライフスタイルに合わせた治療を行うことができます。

ご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。今後も、当センターでは連携する矯正歯科専門医とともに、患者さまにあった治療を提供できるよう努めてまいります

顎変形症に対する手術に伴うリスク(合併症・偶発症)について

顎変形症の手術は、かみ合わせ・発音・呼吸・口元の閉じやすさといった機能の改善に加え、顔のバランスを整えることを目的としています。命に関わる病気に対する手術ではないですが、安全性が非常に重視される治療です。もちろん、合併症や偶発症を防ぐために最大限の対策を行いますが、外科手術である以上、一定のリスクが伴うことをご理解ください。 以下に、顎変形症の手術に伴って起こりうるリスクについてご説明します。

  • 全身麻酔に伴うリスク

    顎変形症の手術では全身麻酔を使用します。全身麻酔に関しては、咽頭や喉の痛み、 静脈内で血栓ができるリスク(深部静脈血栓症)、術後の感染症などが生じる可能性があります。 麻酔科専門医の管理のもと、安全に行われますが、リスクがゼロではないことをご理解ください。

  • 合併症 手術に伴う局所的なリスク(合併症・偶発症)

    顎の周囲には大切な神経や血管が多く存在するため、手術にともなって以下のような合併症が生じることがあります。 また、場合によっては再手術や治療期間の延長、追加の処置が必要になることもあります。

    • (1)異常出血
      通常は輸血が必要になることはありませんが、まれに想定外の出血を生じることがあります。
    • (2)呼吸がしにくくなること(呼吸障害)
      術後に気道が狭くなったり、鼻血が続いたりして、一時的に息苦しさを感じることがあります。
    • (3)神経の障害(知覚異常など)
      手術後、一時的に唇や歯ぐき、口の中の感覚が鈍くなる(しびれる)ことがあります。これは8割程度の方に見られ、ほとんどの方は半年から1年以内に回復しますが、まれに1年以上感覚が戻らないこともあります。ごく稀に顔面神経麻痺を起こすケースもあります。
    • (4)想定外の骨折(異常骨折)
      手術中に予想外の骨折が起こることがあり、追加の処置が必要になることがあります。
    • (5)骨を固定するプレートのトラブル
      骨を固定するために使用するプレートが、外れたり、割れたりすることがあります。
    • (6)顎関節の脱臼
      ごくまれですが、手術後に顎の関節が脱臼することがあります。エックス線検査で脱臼が確認された場合には、再手術が必要になることがあります。
    • (7)下顎の関節がすり減ること(進行性下顎頭吸収)
      手術後に、顎の関節の骨が徐々にすり減ることで、かみ合わせが変化してしまうことがあります。
  • 顎変形症治療に伴うその他の負担(デメリット)

    健康保険を使って手術を受ける場合は、ほとんどのケースで術前に6か月以上の矯正治療が必要です。術前には一時的に顔の歪みが目立つように感じる場合があります。

費用について

この治療は健康保険の適応外のため、全額自己負担となります。診療にかかる費用は下記の通りです。また同日に他の診療科の診察は受診できませんのでご注意ください。

自由診療による顎矯正手術 料金表

①外来時
初診料 5,500円(税込)
再診料 1,100円(税込)
顔面CT+X線検査 20,900円(税込)
全身麻酔 術前検査(血液検査、心電図、呼吸機能検査、胸部X線) 22,000円(税込)
②入院時
手術 入院期間 料金(税抜) 料金(税抜)
上顎骨ルフォーⅠ型骨切り術+下顎枝矢状分割術 7日間 ¥1,800,000 ¥1,980,000
下顎枝矢状分割術 7日間 ¥1,100,000 ¥1,210,000
上顎前歯部歯槽骨切り術 7日間 ¥1,000,000 ¥1,100,000
下顎前歯部歯槽骨切り術 7日間 ¥820,000 ¥902,000
オトガイ形成術 5日間 ¥500,000 ¥550,000
上下顎プレート除去術 3日間 ¥300,000 ¥330,000
下顎骨プレート除去術 3日間 ¥250,000 ¥275,000

※手術料金には手術料、全身麻酔料、薬剤料、画像検査、4人部屋入院料、食事代が含まれます。

※入院期間が延長となった場合は、1日につき22,000円の追加料金がかかります。

※個室をご希望の方はお部屋のタイプにより別途料金がかかります。

※チタンプレートを吸収性プレートに変更する場合は、別途料金がかかります。

最後に:手術を受けるかどうか、よくご検討ください

顎変形症は命に関わる病気ではありません。だからこそ、手術のメリットとリスクを十分に理解し、ご自身の意志で治療を選ぶことが大切です。私たちは最大限の安全対策を講じていますが、それでもすべてのリスクをゼロにすることはできません。
ご自身のご希望と、治療にともなうメリット・デメリットをよく考えた上で、手術を受けるかどうかを慎重にご判断いただければと思います。