公開日:2023年3月7日 |最終更新日: |カテゴリ:放射線治療コラム, 肝がん

肝細胞がんに対する定位放射線治療

以前は肝細胞がんに対しての放射線治療はほとんど行われていませんでしたが、高精度に照射する技術の進歩によって様々な形で照射が行われるようになっています。今特に注目されているのは直径4cm程度で数個までの肝細胞がんに対する定位放射線治療(SBRT)です。

肝細胞がんに対するラジオ波焼灼(RFA)の利点とリスク

手術不可能な肝細胞がんにはラジオ波焼灼(RFA)が行われます。RFAは良い方法ですが、脈管のそばやその他の針が到達しにくい部位で難しいことがありますし、手術に比べれば侵襲は少ないとはいえ、針を刺すという負担とリスクがあります。

SBRTの利点と制限

体外から放射線治療を行うSBRTでは患者さんの負担が少なく、何も感じずに外来で治療できて施行後もすぐ帰ることができます。また位置に関わらず治療ができます。ただし、比較的新しい治療で、RFAとの無作為比較試験などとの治療成績の厳密な比較はまだないため、標準治療にもなっていません。しかし局所再発率は同様に少なく比較的大きな腫瘍に対してはより優れていることが限られた結果からは示唆されています(図1)。一方、病変が多い場合、肝機能の極端に悪い患者さんへの適応は制限されます。もし「手術やRFAができない」、あるいは「どうしてもやりたくない」、という方はご検討されても良いかと思います。

図1

図1:腫瘍サイズ2cm未満と以上でのラジオ波焼却(RFA:黄色)と定位放射線治療(SBRT:青色)との比較. 文献1より


文献1. Wahl DR et al. Outcomes After Stereotactic Body Radiotherapy or Radiofrequency Ablation for Hepatocellular Carcinoma. J Clin Oncol. 2016 Feb 10;34(5):452-9.


監修

総合東京病院 放射線治療センター
国枝 悦夫

国枝悦夫医師

放射線治療センター 放射線治療セカンドオピニオン外来